眼帯 目撃情報 未解決 第3話/全4話 2026.07.17

消えた演者を追って——全国から相次ぐ「眼帯の女性」目撃情報(第3話)

私は角度を変えて、演じていて印象に残っていることはあったか、とだけ聞いてみた。眼帯の女性という役を、実際に舞台で動かしていた感触のようなものを。

彼女は、初めて、少し長く考え込んだ。カップの縁を指でなぞりながら、言葉を探しているようだった。

「あの役は……なんというか。自分でやっているのに、自分でやっている気が、しない瞬間が、何度かあったんです」。ゆっくりと、彼女は続けた。「稽古のときも、本番でも。指示されていない間の取り方を、勝手に体がしていることがあって。ここで三秒止まろう、なんて決めていないのに、気づいたら止まっている。演出の人には、いいね、その間、って褒められたんですけど。私自身は、あまり、いい気持ちじゃなかったです」。

なぜ、と聞くと、彼女は少し笑った。「うまく言えないんですけど。自分が選んで動いているんじゃない感じ、というか。台本を、なぞらされているみたいな」。そこまで言って、口をつぐんだ。言いすぎた、というような表情だった。

私は、その「なぞらされている」という言い方に引っかかって、もう少し詳しく聞こうとした。誰かに指示されていたわけではないのに、体が勝手に決まった動きをする、ということか。彼女は、そうですね、と曖昧にうなずいたきり、はっきりとは肯定しなかった。「本番の三日間、私は毎回、同じところで同じように止まったんです。自分では、毎回ちゃんと考えて演じているつもりだった。でも、後で録画を見せてもらったら、間の長さが、三日とも秒単位で同じで。あれは、少し怖かったです」。人間が三日続けて、まったく同じ間合いを取ることは、そうそうない。彼女はそのことを、当時からうっすら気味悪く思っていたようだった。

冷めかけたコーヒーに、彼女は口をつけなかった。カップを両手で包むようにして、しばらく黙っていた。私は急かさずに待った。やがて彼女は、「もう、この話はあまり」と、小さく首を振った。