眼帯 目撃情報 未解決 第3話/全4話 2026.07.17

消えた演者を追って——全国から相次ぐ「眼帯の女性」目撃情報(第3話)

近ごろ、この役にまつわる噂が全国で広まっていることを、彼女は知っているのか。眼帯の女性が各地で目撃されている、という話を向けると、彼女は表情をほとんど動かさずに、「そうですか」とだけ言った。驚いた様子はなかった。むしろ、そういうこともあるだろう、と、どこかで予期していたような落ち着き方だった。私はその反応の薄さのほうに、かえって引っかかった。

念のため、目撃談の内容をいくつか伝えてみた。夜道で丁寧に声をかけてくること。相手の返事を待って、ふいに立ち去ること。そして、あの言葉を口にすること。私が「あなたは本当にそっちを選んだんですか」ともう一度読み上げると、彼女は窓の外に目をやった。しばらく、通りを歩く人を目で追っているようだった。

「その役をやったのは、私だけのはずなんですけどね」。彼女は、独り言のようにそう言った。そのはずなんですけど、と、もう一度小さく繰り返した。そこには、自分でもうまく説明のつかない何かを持て余しているような響きがあった。私は、その先を聞きたかったが、彼女はもう口を開かなかった。

会話は次第に途切れがちになった。これ以上は聞き出せそうにない。私は取材を切り上げることにして、長く引き止めてしまったことを詫び、伝票に手を伸ばした。彼女も、帰り支度を始めていた。

席を立とうとしたとき、彼女がふと、独り言のように言った。こちらが何かを問いかけたわけではなかった。私はもう、鞄を肩にかけていた。彼女はテーブルの一点を見たまま、誰に言うでもなく、静かにこう続けた。

「オーディション、すごい人数だったので」