目撃相次ぐ
ここ二年ほど、同じ特徴を持った女性の目撃談が全国から寄せられている。左目に白い眼帯をした、二十代から三十代くらいの女性。夜、駅の外れや住宅街の路地に立っていて、通りかかった人に短く声をかけてくる。それだけの話だ。だが証言の細部が、地域をまたいで奇妙に揃っている。
まず、はっきり時期と場所が特定できた証言から並べてみる。
宮城県のある地方都市。昨年の秋、仕事帰りに駅の南口を歩いていた男性会社員(40代)は、バス停の柱の脇に立つ女性に会釈をされた。「こんばんは、と丁寧に言われたんです。それで、道でも聞かれるのかと思って足を止めた。そうしたら、じっとこっちの顔を見て、それきり何も言わない。気まずくて、私のほうから会釈を返して歩き出しました」。十メートルほど進んで振り返ると、女性はもういなかったという。「走って逃げたとか、そういう感じじゃないんです。ただ、いなくなっていた。荷物を持っていた記憶もない。今思うと、あの人はあの場所に、何をしに立っていたんだろうと」。
大阪府の繁華街の裏手では、飲食店勤務の男性(20代)が閉店後に声をかけられている。「肩をとんとん、と二回叩かれて、振り返ったら眼帯の女の人が立っていて。落とし物ですよ、って言われたんです。でも僕は何も落としてなくて。あなた、これ落としましたよね、って地面を指さされたんですけど、そこには何もない。もう一回顔を上げたら、女の人はいなかった。あんな短い時間で、どこにも行けないはずなんですけどね」。彼はその夜のことを、しばらく誰にも話さなかったという。「話しても、疲れてるんじゃないのって言われるだけだと思って」。